「30年、いや、20年、いやいや、10年前でもいいから、過去に戻ってやり直したい…」
そんなことを思い続ける人生だった。別に、そこまで悪い人生ではなかったように思う。だけれど、ふいにそういう感情に襲われる時があった。
今もそう思っている。何歳の自分、どこのシーン。そんな贅沢は言わない。だけれど、もし、過去に戻れたなら、きっと今よりも輝かしい未来を作れる気がする。
そんなことを思いながら、70歳の僕は、公園のブランコに揺られている。
12回目の深いため息をついてから、チェーンを掴んで立ち上がろうとした時、手を滑らせた。勢いあまってそのまま後ろにひっくり返り、僕は気を失った。
「30年、いや、20年、いやいや、10年前でもいいから、過去に戻ってやり直したい…」
そんなことを思い続ける人生だった。別に、そこまで悪い人生ではなかったように思う。だけれど、ふいにそういう感情に襲われる時があった。
今もそう思っている。何歳の自分、どこのシーン。そんな贅沢は言わない。だけれど、もし、過去に戻れたなら、きっと今よりも輝かしい未来を作れる気がする。
そんなことを思いながら、70歳の僕は、公園のブランコに揺られている。
13回目の深いため息をついてから、チェーンを掴んで立ち上がろうとした時、手を滑らせた。勢いあまってそのまま後ろにひっくり返り、気を失った。…
ある日、偶然通りがかった公園で、悲しげにうつむいてブランコに揺られている見ず知らずの老人をみて、ふいに気が付いてしまった。
「僕は人生をやり直している。」と。
ブランコに乗ってため息をつき、過去に戻れたら、きっと今よりも輝かしい未来を作れる気がする… と嘆く人生を、何度も何度も今までと同じように、それをなぞるルールがあるかのように、何度も何度も何度も繰り返し、変わることなく同じ場所からのリスタートを繰り返している事に。
「今、やり直せよ!」
公園内で作業中の工事現場の人が、穴の中で作業をしている人に向かって突然大きな声で叫ぶのが聞こえた。
震えた。僕に言っているとしか思えない言葉だった。
「今、やり直せよ!」
その日から、僕は変わった。過去の記憶の一切を失い、今、この世界に戻ってきた。
未来なんて分からないのは、13回繰り返した今までの人生と同じ。
だけれど僕はもう、公園で14回目のため息をつくことはない。
それだけは言い切れる。
僕と同じように、繰り返しのループの中にいる人に言いたい。
君も、今、戻って来た。
やり直せるよ、今。