マッチョさんの剃刀

飲食店で働くすべての人が「この仕事を選んで良かった!」と心から思えるように。

ボケモン

 道幅3メートル近くある近所の道を歩いていると、後ろから大きな声で怒鳴られた。

 「オイコラッ!広がって歩きやがってボケッ!通られへんやろがいッ!」

 振り返ると自転車にまたがった60歳前後の坂東英二風のオヤジが完全にキレている。

 道幅は3メートル。

 3メートルの道幅で邪魔になる程の体型に、僕はいつからなったんだろう…あっけにとられて振り返ったままボンヤリしていると、

 「ボケコラッ!」

 と言いながら、英二は自転車に乗って通り過ぎていった。

 さすがにカチンと来た僕は通り過ぎる英二に向かって

 「殺すぞ!」

 と丁寧に言った。

 
 話は終わらない。

 
 英二はキレた。

 自転車を降り、何故かカゴに入れてあった木の棒を振り回してコチラに向かって来た。

 英二はウッディーに進化した。

 ウッディーは僕の前で武器を掲げ、殴るフリをし、殴らずに肩でぶつかって来た。

 ウッディーはショルダーに進化した。

 怖くなった僕(殴って殺してしまう事を恐れた)は無視をキメ込んだ。

 ショルダーは、棒を持ったまま2回程僕にショルダータックルを繰り出し、

 「ボケッ!」

 と言いながら自転車に乗り、去っていった。

 
 朝8時の出来事だ。

 
 ショルダーの「ボケーッ!」という雄叫びが耳の奥でこだました。
 朝日がキラキラと地面を照らす。野良猫が毛づくろいを止め、僕をジッと見ている。なんとなく情けなくて少し泣いた。

 そんな朝。

 

 

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