タイミングを逃し、一日中なにも食べず終いだったので、仕事帰りの道すがら、約2年ぶりに”こってり”ラーメンを食べに行った。
店に入ると、遅い時間にも関わらずそこそこ席が埋まっていた。
カウンター席のバッシングも間に合っていない。
店員は僕の方を見ようともせず、めんどくさそうにサービスではない作業をこなしている。
「帰りたい…」
急速に店に入った事を後悔しながらボンヤリ入り口でたたずんでいると、ようやくやたらデカイ白長靴を履いた店員が、
「カウンターへどうぞぉ」
と声をかけてくれた。
「あと2秒声をかけるのが遅ければ、君の白長靴は真っ赤に染まっていたよ。」
と心の中で思いながら席に着いた。
『味玉ラーメン”こってり”』
食べ終わり、お金を払いにレジへ行った。
白長靴は「はい、550円です」と無表情で言った。
「550円ッ!安ッ!」
心の中で絶叫しながら躊躇せずにお金を渡した。
「あの、これ、どうぞ」
白長靴は、黄金に輝くカードを僕に渡し、
「あーざーしたーッ!」
と絶叫した。
【VIP CARD】
と書いてある。
2年ぶりに行ったにも関わらず、僕はどういう訳かVIP扱いになってしまった。
来店時にこのカードを提示するだけで、
唐揚げや餃子、小チャーハンやトッピングなどが1品無料で貰える。
スゲー!
スゲーが、こんな販促じぁ駄目だ。
僕の会計が550円だった理由も、せっかくのカードの説明も、なーんの説明もこの店には無い。
期間集客は、期間に来店されたお客様が期間終了後にリピーターになってくれて初めて成功なのだ。
目先の集客の為に経費を圧迫し、一瞬の売り上げの跳ねで効果を感じる。
白長靴は、期間集客中の今だから、今まで以上に何をするべきなのかを知らない。
黄金に輝くカードが、少し悲しい。