ミヒャエル・エンデが書いた『モモ』という童話がある。
ある日、〔時間貯蓄銀行〕から【灰色の男たち】が街にやってきて、
「時間を貯めれば命が倍になるんやで!」
と吹聴し、街中の人々は、時間を節約するためにせかせかと生活するようになり、要らないと思った時間を男たちに預けていく。
ある時、理髪店の主人は思う。
「おもろない… お客さんとの会話をやめて、急いで仕上げるようにしたけど… 仕事をぜんぜん楽しめない…」と。・・・
たわいのない会話は、仕事を、人生を、豊かなものに変える。
自粛期間を経て、会えなかった人たちが、会う場所を求めてやって来る。
「会う」が価値だと改めて気付いたことで、飲食業の価値は、今まで以上に高まる。
ミヒャエル・エンデは、『モモ』の作中で、
”時間をはかるのにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。
というのは、だれでも知っているとおり、その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。
なぜなら時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです。”
と言っている。
「時間とは、生きるということ、そのもの」
自分の時間は自分のものだが、自分だけのものではない。
共に過ごせる時間を感じながら、たわいのない会話を楽しみ、たわいのない会話を楽しむ場所を、提供していく。
これが、僕たちの仕事だ。